寛大であろうとする思考：人の良いところだけを見る

巧妙な思考による概念：人の美点だけを見る?

人の美点だけを見ようという言葉をよく耳にしますがこれは、
人の欠点には敏感で自分の欠点には鈍感だと自覚した思考が
自らの性癖を上手くコントロールしようと
必死に絞り出したアイディアです。

思考は実に巧妙ではありませんか？

他者の欠点に敏感で自分の欠点に鈍感だという事実を
よく見つめもしないで自分の癖を自らの思考で
何とかしようとしているのですから！

巧妙な思考は事実にとどまるかわりに、
寛大でいたいという自らの願望から、
人の短所を見て不快になりたくないという想いから、
人の短所には鈍感で長所には敏感になるという、
事実とは真逆のアイディアを思いついたのです。

限定された敏感さは敏感ではない

私たちは本当に複雑になってしまいました。
思考が私たちを複雑にしたのです。

人の短所には鈍感で長所には敏感であることなど
できるでしょうか？

鈍感ならあらゆることに鈍感だし、
敏感ならあらゆることに敏感ではないですか？

私が本当に敏感なら人の長所にも短所にも敏感だし、
自分の長所にも短所にも敏感でしょう？

もしも人の短所にだけ敏感なら、
私は決して敏感ではないのです。

この事実をまず理解しなければなりません。

美しいものに敏感で醜いものに鈍感なら
あなたは鈍感なのです。

好きなものには敏感で不快なものには鈍感な精神は、
決して敏感ではありません。

限定された敏感さ、部分的な敏感さは、 全く以て敏感ではないのです。

敏感さ・繊細さは全体的なもの

鋭利な精神はあらゆることに気づいていますが、
鈍感な精神は自我という狭い円の中で
起こっていることにしか気づけません。

花々や木々の葉っぱは雨にのみ敏感なのではなく、
風や雪、光などのあらゆることに敏感でしょう？

敏感さや繊細さというのはこのように全体的なもので、
何かに限定されたものではないのです。

事実から離れてはならない

私たちはありのままの事実から逃避し、
理想の状態を思い描いてはそれを追い求めますが、
概念を追い求めてもありのままの事実は変わらないのです。

人の短所に敏感で自分の短所に鈍感だという事実から離れずに、
自分自身の鈍感な精神を見つめるときに初めて、
私たちは変わる（敏感になる）のであって、
〈人の美点だけを見る〉というマントラを唱えるだけでは
そのようにはなれないのです。

人の短所を見ず長所だけを見ようという、
一見良さそうなアイディアをこしらえてみても、
アイディアが人を変えることはありません。

事実から離れないで見つめることが大事であって、
何かの概念を追いかけることではないのです。

気づき・観察が人を変える

人の欠点に気づくのに自分の欠点には気づかない、
そんなあなたの鈍感な心を真正面から見つめるとき、
鈍感さは観察という光に照らされて消えてなくなります。

思考があなたを変えることは決してありませんが、
徹底的な自己観察はあなたを瞬時に変えることができます。

ありのままの自分の姿に気づかないかぎり人は変わりませんが、
気づけば人は瞬時に変容するのです。



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