葛藤・苦しみをもたらす理想を手放す

質問：理想をもたないで生きると、
　　　生きることが苦しくなりませんか？



理想をもたずに生きることが苦痛かどうかを調べる前に、
理想とは何かを理解することが大切です。

理想はどのようにして生まれる？

理想は思考が作り上げるのではありませんか？

思考は脳内に記憶として蓄積された、経験や知識の運動です。

脳内に記憶として蓄積されたものは、
個々によって異なるので、
考え方や感じ方がそれぞれ違うのは当然です。

理想や野心、価値観も各々違います。

あなたの思考が理想を作り上げたのではありませんか？

理想がもたらすもの

素敵だと思う人物の生き方を参考にしたり、
小説や映画の主人公の生き方に影響を受けて、
私たちは理想を作りそれを追い求めます。

理想をもつことで生きる活力を得るかもしれませんが、
理想は私たちに苦しみや焦り、不安、葛藤をもたらします。

理想をもつから現実と理想の間で葛藤するのではありませんか？
理想をもたなければ、この葛藤は生じません。

理想が叶ったときには達成感や喜びを感じるかもしれませんが、
叶わなかったとき、叶いそうもないとき、
あるいは理想が叶うまでの間、
私たちは苦しみ焦り、葛藤するのではありませんか？

不安、不満、絶望感、自己嫌悪を感じませんか？

理想は生きる活力を与える反面、
苦しみ・焦り・葛藤をもたらします。

理想の正体は？

先程理想は思考が生み出したものだとお話ししましたが、
理想は事実ではありません。理想は概念です。

思考は事実について考えることはできますが、
思考が生み出すものはすべて概念です。

概念である理想を追い求めるというのは、
自分の尻尾を追いかけてその場でクルクル回る犬と同じです。

自らがこしらえた理想を必死に追い求めるというのは、
何とも奇妙ではありませんか？

理想に生きるということ

理想に生きるとは、四六時中頭の中にお気に入りの音楽を
流し続けることに似ています。

それはモチベーションを上げてくれるかもしれませんし、
いい気分にさせてくれるかもしれませんが、
夢の中、幻想に生きていることに変わりません。
　
頭の中の音楽がいつも流れている状態では、
日々の生の美しさに出会えません。

川の向こう岸を目指しているとき、
川の流れに注意を払うことはできません。

あなたにとって向こう岸が重要なのであって、
川ではありません。

あなたの意識は彼岸にあり、川にありません。
あなたの意識は理想にあり、現在にはないのです。

理想をもつと日々の生活が疎かになる

あなたにとって人生という川、日々の生活は、
理想を叶えるための手段でしかありません。

あなたの意識は理想を叶えた未来にあり、
現在〈いま〉ではありません。

理想をもつと、現在〈いま〉に生きることはできない

理想に生きることは、思考に生きることであり、
過去に生きることです。

それで私たちは現在に生きているといえますか？

四六時中お気に入りの映画を見て過ごしていて、
現在に生きているといえるでしょうか？

映画が終わったとき、あなたはどうなりますか？
理想が叶わなかったとき、あなたはどうなりますか？

理想は人生を豊かにしてはくれません。

現実逃避させてくれますが、
それが終われば苦しみや絶望感が待っています。

ですから理想という概念をもたずに、
生きることはできませんか？

概念を追い求めず、
事実とだけ向き合って生きていくことはできませんか？

私たちが理想という重荷を降ろしたときにはじめて、
理想がもたらす苦しみ・葛藤を味わうことなく、
軽やかに自由に生きることができるのではありませんか？





関連記事
理想を捨てると正直さが花開く
理想を追い求めずありのままを観察する
個性は自我そのもの：個性が生まれる過程
自由に生きる：思考・過去・自己からの自由